「青」でも進まぬタクシー 東京都心の交差点、異様な渋滞光景
産経新聞 4月20日(月)10時0分配信
交差点付近に駐車するタクシーを取り締まる捜査員ら=3月28日未明、東京都港区六本木(一部画像を処理しています)(写真:産経新聞)
【日本の議論】
都心の交差点で、止まったまま動かないタクシーが目立っている。青になっても進まず、大渋滞を引き起こす原因となっている。進まないのは、ガードレールのない交差点で効率よく客を拾うため。マナー向上を掲げるタクシー業界は、約2年前から対策に乗り出し、警察による取り締まり件数が減少するなど一定の改善はみられた。しかし、いまだに「進まないタクシー」による事故が発生するなど、危険な状態が続いている。違反摘発の現場に同行した。(加藤園子)
■タクシー運転手に示された警察手帳 3月下旬、多くの外国人がにぎわう午前0時過ぎの東京・六本木。ある丁字路交差点の一角で、信号が青になっても歩道に車を寄せたまま数分間タイヤを動かさないタクシーがいた。
このタクシーを避けるため、多くの車が直前に車線変更して脇をすり抜けていく。特に左折してきた車は、交差点の左側の車線に停車しているタクシーを追い越すため、わざわざ第2車線を大回りして交差点を抜けていた。
その光景を確認していた女性がデジタル腕時計に目をやった。
「行きます」
女性の号令で一気に近くにいた男女5人が動き出し、タクシーを囲んだ。正面から近づいた男女が、驚いて顔を上げた運転手に警察手帳を差し出す。交差点付近の駐停車はれっきとした道交法違反。運転手は2点減点、罰金1万2千円となった。
運転手が止めていた理由は「客待ち」。交差点付近は正式なタクシー乗り場と違ってタクシー側も客側も並ばずに済むうえ、ガードレールがなく客が乗り込んできやすいのだ。信号が青になっても動かないのはこのためだった。
取り締まりをしていたのは警視庁駐車対策課と麻布署の捜査員。定期的に取り締まりにでており、この日は約3時間で10台のタクシーを取り締まった。
同署交通課の羽谷恵一課長は、「今日はまだいい方。ひどいときは交差点付近の駐車で100メートルもの大渋滞が起きる」と厳しい表情で話す。
■減少傾向にあるものの…このタクシーを避けるため、多くの車が直前に車線変更して脇をすり抜けていく。特に左折してきた車は、交差点の左側の車線に停車しているタクシーを追い越すため、わざわざ第2車線を大回りして交差点を抜けていた。
その光景を確認していた女性がデジタル腕時計に目をやった。
「行きます」
女性の号令で一気に近くにいた男女5人が動き出し、タクシーを囲んだ。正面から近づいた男女が、驚いて顔を上げた運転手に警察手帳を差し出す。交差点付近の駐停車はれっきとした道交法違反。運転手は2点減点、罰金1万2千円となった。
運転手が止めていた理由は「客待ち」。交差点付近は正式なタクシー乗り場と違ってタクシー側も客側も並ばずに済むうえ、ガードレールがなく客が乗り込んできやすいのだ。信号が青になっても動かないのはこのためだった。
取り締まりをしていたのは警視庁駐車対策課と麻布署の捜査員。定期的に取り締まりにでており、この日は約3時間で10台のタクシーを取り締まった。
同署交通課の羽谷恵一課長は、「今日はまだいい方。ひどいときは交差点付近の駐車で100メートルもの大渋滞が起きる」と厳しい表情で話す。
違法駐車は事故につながることもある。警視庁駐車対策課によると、駐車中の車が関与する都内の人身事故は後を絶たず、昨年は511件発生、4人が死亡している。事故の内容は、駐車車両への追突や、避けるため車線変更してほかの車と接触する事故、駐車車両の陰から出た人をはねる事故などがある。
中でも交差点付近で進まないタクシーは両方のウインカーを点滅させる「ハザード」を付けないため、交差点を曲がる車はもちろん、直進してきた車も避ける直前に無理にハンドルを切らざるを得ず、事故が起きる危険性が高まる。業界にも内外から苦情が相次ぎ5、6年前から問題とされてきた。
背景にあるのは供給過多だ。東京ハイヤー・タクシー協会によると、平成14年の規制緩和によりタクシー事業社が新規参入しタクシー台数が増加。しかしその後の景気低迷で利用者は減少し、「なんとかして客を拾おうと違法客待ちが増加した」と同協会の樽沢功副会長は説明する。
しかし同協会は2020年東京五輪を前にマナー向上を掲げ、2年前から運転手への教育や街頭での指導に注力。警視庁の取り締まりの強化や、景気回復もあり、タクシーによる交差点内での駐車違反取り締まり件数は平成22~24年に約2300~2200件を推移していたのが、25年に約1300件、昨年は約750件と大幅に改善した。
■「なぜほかの車は取り締まらないんだ」と反論した運転手も背景にあるのは供給過多だ。東京ハイヤー・タクシー協会によると、平成14年の規制緩和によりタクシー事業社が新規参入しタクシー台数が増加。しかしその後の景気低迷で利用者は減少し、「なんとかして客を拾おうと違法客待ちが増加した」と同協会の樽沢功副会長は説明する。
しかし同協会は2020年東京五輪を前にマナー向上を掲げ、2年前から運転手への教育や街頭での指導に注力。警視庁の取り締まりの強化や、景気回復もあり、タクシーによる交差点内での駐車違反取り締まり件数は平成22~24年に約2300~2200件を推移していたのが、25年に約1300件、昨年は約750件と大幅に改善した。
「業界の指導や取り締まりで、交差点内に留まることが違法という認識が運転手にも浸透した。取り締まり時に『そんなルール知らない』と反論されることもなく、効果的に指導できる」。駐車対策課の担当者は手応えを示す。
それでも事故ゼロには至らず、麻布署管内では3月11日未明、交差点付近で駐車していたタクシーに、走行してきた乗用車が追突する物損事故が発生している。
六本木で取り締まりを受けた運転手は、「なぜほかの車は取り締まらないんだ」と警察官に迫った。別の運転手は今回の取り締まりの条件を詳細に質問し「2度と同じ過ちは犯したくないからね」と苦々しく笑ってみせた。
駐車対策課の担当者は、「客が乗り降りしやすいところにとどまりたい気持ちは理解できなくもないが、その場で事故が起きれば元も子もない。客側も、交差点付近のタクシーは利用せず、専用の乗り場から乗車するよう心がけてほしい」と話している。
.六本木で取り締まりを受けた運転手は、「なぜほかの車は取り締まらないんだ」と警察官に迫った。別の運転手は今回の取り締まりの条件を詳細に質問し「2度と同じ過ちは犯したくないからね」と苦々しく笑ってみせた。
駐車対策課の担当者は、「客が乗り降りしやすいところにとどまりたい気持ちは理解できなくもないが、その場で事故が起きれば元も子もない。客側も、交差点付近のタクシーは利用せず、専用の乗り場から乗車するよう心がけてほしい」と話している。
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最終更新:4月20日(月)10時0分
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