軍艦島アパート、保存困難 長崎市判断「補修技術がない」
西日本新聞 5月18日(月)9時49分配信
国内最古の鉄筋コンクリート造り高層アパート30号棟(手前右)=2013年12月、長崎市の端島(本社ヘリから)
世界遺産登録勧告されるも、姿消す可能性
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関による世界文化遺産の登録勧告を受けた「明治日本の産業革命遺産」の構成施設の一つ、長崎市の端島炭坑(軍艦島)をめぐり、市が国内最古の鉄筋コンクリート(RC)の高層アパート「30号棟」について、現在の技術では保存困難と判断していることが分かった。軍艦島の象徴として人気を集める建物は将来、姿を消す可能性が高い。
【貴重写真集】住民が住んでいた頃の軍艦島
30号棟は、東京・表参道にあった近代的集合住宅の先駆け「同潤会青山アパート」よりも10年ほど早い1916(大正5)年に建築された。地上7階、地下1階建てで、下請け鉱員住宅として使われた。
市が日本建築学会などに委託した建物の劣化状況の調査で、30号棟は2012年時点で耐用年数が5年を過ぎ、倒壊の危険性がある大破と診断された。ほかに18号など4棟も大破、別の4棟は補修困難とされた。
産業遺産としての価値を構成するのは「生産施設」と「護岸」で、「居住施設」については世界遺産登録に必要な要件ではないため、市は島内約40の居住施設に優先順位をつけて劣化を防ぐ方針を決定。大破や補修困難とされた9棟は上位から外した。今後、崩壊した場合、他の施設の保存を優先し、がれきなどを現状保存せずに撤去することもあり得るという。
市は、RC構造物は保存技術が確立されていないため「保存策がすぐに見つかればいいが、現実的には難しい。多額の費用もかかる」としている。軍艦島をめぐっては、6月1日から長崎市で開かれる国際会議で保存策を議論。日本建築学会も本年度、全棟を調査し補修や補強方法を検討する。
=2015/05/18付 西日本新聞朝刊=
産業遺産としての価値を構成するのは「生産施設」と「護岸」で、「居住施設」については世界遺産登録に必要な要件ではないため、市は島内約40の居住施設に優先順位をつけて劣化を防ぐ方針を決定。大破や補修困難とされた9棟は上位から外した。今後、崩壊した場合、他の施設の保存を優先し、がれきなどを現状保存せずに撤去することもあり得るという。
市は、RC構造物は保存技術が確立されていないため「保存策がすぐに見つかればいいが、現実的には難しい。多額の費用もかかる」としている。軍艦島をめぐっては、6月1日から長崎市で開かれる国際会議で保存策を議論。日本建築学会も本年度、全棟を調査し補修や補強方法を検討する。
=2015/05/18付 西日本新聞朝刊=