「ドラえもん」見ても反応なく…大山のぶ代さん介護本、異例の売れ行き12万部超
西日本新聞 1月21日(木)15時57分配信
「娘になった妻、のぶ代へ 大山のぶ代『認知症』介護日記」(双葉社)
■今日元気なら次の今日が来る。それが幸せ
アニメ「ドラえもん」の声で知られる大山のぶ代さん(82)の夫で俳優の砂川啓介さん(78)が書いた「娘になった妻、のぶ代へ 大山のぶ代『認知症』介護日記」(双葉社)が注目を集めている。昨年10月の発刊から既に発行部数12万部を超え、介護本としては異例の売れ行きを見せている。「彼女の回復が一番の願いですが、回復してこれを読んだらどう思うか不安も」と語るほど生々しい描写に満ちた手記だ。
【この記事の写真はこちら】昨年8月に自宅で撮影
砂川さんの介護生活は、大山さんが2008年に脳梗塞を発症したことから始まった。12年に認知症と診断されてからも、ごく身近な人の手助けだけで在宅での介護を続けてきたが、親友の毒蝮三太夫さん(79)に相談したことをきっかけに、15年5月にラジオ番組での公表に踏み切った。
「放送ぎりぎりまで悩みましたが、公表すると決めた以上、何もかも包み隠さず話そうと思いました。『本人じゃないのに、何でそんなことを話すんだ』というお叱りを受けることも覚悟していたのですが、放送中から励ましの電話やメールが続々と届いて、本当に勇気づけられました」
. 「ドラえもん」見ても反応なく…大山のぶ代さん介護本、異例の売れ行き12万部超
砂川啓介さん
苦悩も赤裸々に
今回出した手記には昨年8月に撮影した夫婦の写真も掲載されている。表紙でも大山さんは柔らかくほほ笑んでいる。砂川さんも「撮影のときは、自分から積極的にポーズを取っていました。表紙を見た方は、僕の方が認知症なんじゃないかと思われるかも」と笑う。
しかし手記の中では、大山さんの徘徊(はいかい)や幻覚、排せつなどに対する苦悩が赤裸々につづられている。「最近は比較的落ち着いています。でも記憶がすぐに途絶えて、5分前のことも全く覚えていません。何より、テレビで『ドラえもん』を見ても、反応がないのはつらいですね」
それでも公表したことで、追い詰められていた精神状態からは抜け出せたという。「誰にも話せなくて一人で悩んでいた頃の自分に『頑張り過ぎなんだよ。隠さない方が状況は良くなるぞ。勇気を出して周りの人に助けを求めてみろよ』って教えてやりたいですね」
13年に胃がんの摘出手術を受けるなど、砂川さん自身の体調も決して万全とは言えない。「僕が彼女より先に逝くことは絶対にできません。でも、考えるのは今日をどう生きるかまで。それ以上は考え過ぎないことにしています。今日、2人で元気でいられたら、また次の今日がやって来る。それが幸せなんじゃないかと思っています」
. それでも公表したことで、追い詰められていた精神状態からは抜け出せたという。「誰にも話せなくて一人で悩んでいた頃の自分に『頑張り過ぎなんだよ。隠さない方が状況は良くなるぞ。勇気を出して周りの人に助けを求めてみろよ』って教えてやりたいですね」
13年に胃がんの摘出手術を受けるなど、砂川さん自身の体調も決して万全とは言えない。「僕が彼女より先に逝くことは絶対にできません。でも、考えるのは今日をどう生きるかまで。それ以上は考え過ぎないことにしています。今日、2人で元気でいられたら、また次の今日がやって来る。それが幸せなんじゃないかと思っています」
▼さがわ・けいすけ
1937年生まれ。東京都出身。61年、NHKの幼児番組「うたのえほん」に体操のお兄さんとして出演し、人気を博す。64年に大山のぶ代さんと結婚。共著で料理本を出すなど、おしどり夫婦として知られている。
=2016/01/21付 西日本新聞朝刊=
. 西日本新聞社