水害は水で制す…早い・強い・漏れ少ない
2016年09月16日 18時01分
ポンプで送った水で水のうを膨らませる作業員ら。3段で高さ約1メートル20まで積み上げられた(15日、取手市の小貝川近くで)
ポンプで送った水で水のうを膨らませる作業員ら。3段で高さ約1メートル20まで積み上げられた(15日、取手市の小貝川近くで)水を入れて膨らませた袋で水流をせき止める「水のう」の試験施工が15日、茨城県取手市中内の小貝川右岸で行われた。
水のうは、土を入れた「土のう」より強度は劣るものの、半分ほどの時間で設置できるのが特徴。国土交通省下館河川事務所は、関東・東北豪雨から1年になるのにあわせて導入を決めた。新たな水防方法として注目を集めている。
試験施工には、下館河川事務所のほか、取手市や龍ヶ崎市など流域自治体の防災担当者らが参加。直径48センチ、長さ15メートルの水のう12本をつなぎ合わせ、川の水をポンプで送りながら、ピラミッド形に高さ約1メートル20まで積み上げた。
1本が設置されるまでにかかった時間は、広げるまでに約10分、水を入れ始めてから膨らむまで約10分の計20分ほど。同規模の土のうと比べ、半分ほどの時間で整った。
取扱業者によると、素材にはポリエステルなどの化学繊維を使っているため、熱や刃物などには弱いが、水圧に対しては、十分な強度があるという。
下館河川事務所などによると、水のうを使った防災の取り組みは、中国地方や北陸地方で国や自治体が進めているほか、東日本大震災で被災した宮城県石巻市などでも、地盤沈下した沿岸の高潮対策などに使われている。作業を視察した筑波大学の白川直樹准教授(河川工学)は、「水漏れも少なく、効果は確認できた。作業には熟練がいるが、水防の技術として活用できるはず」と話した。
下館河川事務所は今後、小貝川上流や、鬼怒川でも水のうを使った水防訓練を予定しており、流域自治体にも利用方法などを紹介していく。同事務所の銭谷秀徳副所長は、「土のうやシートと組み合わせることで、複雑な地形でも、短時間で多くの断面を塞ぐことができる。保管もしやすく、土の運搬もいらないため、緊急時に役立つはずだ」と話した。
2016年09月16日 18時01分 Copyright © The Yomiuri Shimbun